原材料や部品、製品などの棚卸資産は調達価格が一定になることはあまりなく、都度金額が変わることが通常です。
例えば、原材料を2回に分けて仕入れた時に、1回目は1,000円/個で50個、2回目は1,100円で50個だとします。そうすると、全体の在庫としては100個で105,000円で単価1,050円ですが、単品単位で見ていくと最初に仕入れた分は単価1,000円で、2回目に仕入れた分は単価1,100円になります。
この原材料を製造工程に投入し、製品原価を算出することになるのですが、どの単価で払い出すのかという問題が出てきます。会計的には、先入先出法や平均法、仕入れ販売を行う商品の場合だと個別法や売価還元法などが候補としてあり、標準原価計算を行っている場合等には標準原価を含む予定原価での払い出しも認められています。(後入先出法という考え方もあるのですが、日本基準でもIFRSでも認められなくなりました)
SAPのERPの場合は、移動平均法と標準原価から品目コード単位でどちらで払出単価を算定するのかを指定する形になっており、今回はこのうちの標準原価を採用した場合の話になります。標準原価計算制度において、仕掛品勘定の勘定記入方法として「シングルプラン」、「パーシャルプラン」、「修正パーシャルプラン」の3種類ありますので、簡単にそれらについて説明し、SAPではそのどれを採用しているのかを解説したいと思います。
シングルプラン
まず、シングルプランですが、この方法を採った場合は仕掛品勘定の借方、貸方はどちらも標準原価で記帳することになります。
つまり、製造工程に原材料等を投入して仕掛品に計上する時も、製品が完成して仕掛品から製品に振り替える時も、金額の計算としては「標準価格 × 標準数量」で計算します。そうすると、標準原価と実際原価の差額である原価差異は、材料費などの原価財(材料費)側で把握されることになります。
パーシャルプラン
次にパーシャルプランですが、この方法を採った場合は、仕掛品勘定の借方は実際原価で記帳され、貸方は標準原価で記帳されます。
借方の「実際原価」については、少し補足が必要で、原価計算における「実際原価」というのは、実際数量を基に計算した原価のことで、「実際価格 × 実際数量」は当然ながら実際原価ですが、「標準価格 × 実際数量」も実際原価と表現されます。
パーシャルプランにおける「実際原価」は前者の「実際価格 × 実際数量」で、原価差異は仕掛品勘定で全て把握されることになります。
修正パーシャルプラン
最後に修正パーシャルプランについてですが、パーシャルプランで説明した内容を踏まえると理解が早いと思いますが、基本的な考え方はパーシャルプランと同じなのですが、仕掛品勘定の借方の実際原価を「標準価格 × 実際数量」で計算する方法になります。(貸方は標準原価で記帳します。つまり、製品勘定へは標準原価で振り替えるということです)
そうすると、数量差異は仕掛品勘定で把握され、価格差異は原価財側の勘定で把握されることになります。
SAPでは修正パーシャルプランが採用されている
3つの勘定記入方法について説明してきましたが、SAPではどの方法が採用されているかというと、「修正パーシャルプラン」が採用されています。
つまり、MMの購買発注に対する入庫を行ったタイミングで、あらかじめ算出していた標準価格と実際価格との差異が価格差異として把握され、その原材料を製造指図に払出し(標準価格で払出し)、製品が完成したタイミングで標準数量と実際数量の差異が数量差異として把握されることになります。(先ほどの説明は一般的な原価計算の書籍に合わせて仕掛品勘定で把握されると記載しましたが、SAPでは製品が計上されるタイミングで数量差異が計上されます)
標準原価という意味では、労務費も基本的には考え方は同じになりますので、価格差異(賃率差異)は労務費側、数量差異(時間差異)は製造指図側で把握されることになりますので、補足しておきます。(計上自体は、直接活動配分などの機能を使うことが多いので、原材料等の計上方法は異なります)
まとめ
今回は、一般的な標準原価計算の勘定記入方法の説明と、SAPでは修正パーシャルプランが採用されるという内容で解説しました。
製品原価計算のコンポーネントを導入する場合には、必須の知識となりますので、ぜひ覚えておいてください。