MM(在庫・購買管理)の流れをおさらい
まずはMMの基本的な業務の流れについておさらいしておきます。仕入販売する際の商品を調達するケースでも、製造業の原材料を調達するケースでもベースとなる業務プロセスはこの3つです。
- ①購買発注(T-CD:ME21N)
- ②入庫(T-CD:MIGO)
- ③請求書照合(T-CD:MIRO)
発注部門に購買依頼を出したり、仕入先に見積もりを出してもらったりなど、ケースによって異なる部分は当然ありますが、核となるのは上記①〜③になります。
簿記のテキストで習う仕入れの仕訳
今回は仕訳の話になるので、簿記のテキストで習う仕訳との対比で確認したいと思います。日商簿記3級のテキストの前半に商品を仕入れて買掛金を計上する仕訳が出てくると思います。
仕入 ¥1,000 / 買掛金 ¥1,000
こんな仕訳ですね。
この仕訳が今回の入庫請求仮勘定を計上する仕訳と同様の取引になります。ただ、SAPのシステム上で入庫請求仮勘定の仕訳を見たことがある方は、少し違う仕訳のイメージをしていたと思います。具体的にはこんな仕訳ですよね。
入庫:原材料 ¥1,000 / 入庫請求仮勘定 ¥1,000
請求書照合:入庫請求仮勘定 ¥1,000 / 買掛金 ¥1,000
ポイントは2つありますが、1つ目は後述しますが入庫と請求書照合の2つのオペレーションに分けてSAPでは仕訳を登録するのが仕訳が異なる理由です。
もう1つが、簿記のテキストでは三分法という方法で会計処理した場合を例にして記載されていますが、SAPは売上原価対立法という方法で会計処理されるのが基本となっているからです。ここについて詳しく書くことは今回はしませんが、売上原価の算定方法が異なるために簿記のテキストでは仕入勘定で記載されている部分が、SAPでは原材料等の棚卸資産の勘定になっています。
ひとまずは、SAPでは入庫と請求書照合という2ステップに分けて、棚卸資産と買掛金の計上をするというところだけ理解しておいてもらえば良いかなと思います。
入庫請求仮勘定は入庫と請求書照合を繋ぐ経過勘定
先ほどの理由の1つ目だけ少し深掘りしておきたいと思います。
なぜ、SAPの基本の業務プロセスでは入庫と請求書照合に分かれて調達の処理をするのか?という点です。これには処理する部門の問題とタイミングの問題があります。入庫は、倉庫管理している部門の人や工場部門の人など、現場の人が原材料等を受け入れて、納品書を確認しながら入庫の処理をする形になることが多いと思います。
一方、請求書照合は、経理部門の人が請求書を確認して発注した内容(取引の内容や金額など)が合っているかを確認した上で債務計上します。なので、業務として入庫をする人と、請求書を受け取って債務を認識する人とが別部門になるという点です。
また、それぞれの業務が証憑とする文書として、入庫は納品書、請求書照合は請求書になりますが、それらが同時に届くこともありますが、請求書は後から送付されてくることも多いからです。
簿記を学ぶ上では、棚卸資産と債務の計上は同時でも問題ないのですが、実務上はその2つはワンセットで行われる訳ではなく、別ステップの業務となっていることが多いので、その2つを繋ぐために入庫請求仮勘定という経過勘定をはさんでいるという理解をしておけば良いと思います。
入庫請求仮勘定を残を確認する
ここまでで解説してきた内容で察しがついているかもしれませんが、入庫請求仮勘定というのは、入庫と請求書照合の2つのタイミングの差を吸収するために計上される仮の勘定です。
つまり、この勘定は一連のプロセスが流れたら金額がゼロになるもので、逆にこの勘定に残高が残っているとおかしいといえます。もちろん入庫までしかやっていない状態であれば残高があって当然ですが、そうでないのに金額がある場合は、何かしらの不整合が生じている可能性があるので、原因を確認する必要があります。
勘定コード明細照会(FAGLL03)などを確認しても良いですが、MMの機能としてもレポートが用意されているのでご紹介しておきます。
入庫/請求書受領収支一覧(MB5S)を使って確認もできるので、機会があれば確認してみてください。
関連トランザクション
- 自動仕訳の設定:OMWB
- 購買発注伝票登録:ME21N
- 入出庫伝票登録:MIGO
- 請求書照合登録:MIRO
- 入庫/請求書受領収支一覧:MB5S
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