管理会計(CO)の基本として知っておくべきマスタデータとして原価センタがあります。
COモジュールでは当然必要ですが、FIやMMなど他のモジュールから原価センタに対してコスト計上するようなケースも多々ありますので、会計関連のモジュールが専門の方だけではなく、ロジ系を専門とされている方も概要ぐらいは知っておくべき内容だと思います。
原価センタとセットで扱うことの多い利益センタとの関係についても説明したいと思いますので、ぜひ読んでみてください。
部門のコスト管理をするためのオブジェクトが原価センタ
「原価センタ」という用語から想像ができると思いますが、原価を管理するためのオブジェクトが原価センタです。
原価というと、「製造原価」もしくは、製造原価に販管費を加えた「総原価」を主に表すと思いますが、原価センタで管理する対象としては、それに限る必要はなく、要件に応じて営業外費用や特別損失なども原価センタで管理することは可能です。
ですので、大まかな理解としては損益計算書の費用の部に表示するような勘定科目が原価センタでの管理対象だと思ってもらったら一旦はOKです。正確には一次原価要素として登録されている勘定コードで仕訳が起きる場合は、原価センタで管理する対象となります。
用語の定義がややこしくなるので、ここでは「コスト」と表現して話を進めたいと思いますが、コストを管理するために使えるオブジェクトとして、SAPではWBSや製造指図、内部指図、受注明細など様々なオブジェクトが用意されています。WBSの場合はプロジェクトのタスク単位、製造指図であれば製品製造の単位などでコストを集計するために使いますが、原価センタについては部門の原価を管理するために使うのが基本となります。
どの程度まで細かな粒度で定義するのかはSAP導入企業の要件によりますが、考え方としては部課の単位で原価センタを作成し、日々の企業活動の中で発生したコストがどの部課に属するものなのかを原価センタを割り当てることで集計していく形になります。
工場の生産ラインを原価センタで表現
導入企業によりけりになりますが、工場の生産ラインや生産工程に対して原価センタを作成するケースもあります。
特にPP(生産管理)モジュールを導入する場合、一連の作業工程を「作業手順」というマスタで管理し、各工程をどこで行うのかを「作業区」というマスタで管理しますが、この作業区に原価センタを割り当てることになるので、本社組織とは少し異なる粒度で原価センタを定義することもよくあるという点は覚えておくと良いと思います。
また、間接費を予定配賦する場合に「原価計算表」という仕組みを使って、製造指図等に計上することがありますが、その場合、借方は製造指図、貸方は原価センタ等に計上することになります。この時の原価センタは実部門を設定することもありますが、原価計算用の論理的な原価部門を設定し、そこに計上することがあります。
その場合、実際原価としては各部門の原価センタに借方計上され、予定配賦した分については論理的な原価部門に貸方計上されますので、原価差異については、それらをすべて集計して把握する形になります。
つまり、実組織に応じて原価センタを設定するのに加えて、原価計算の要件に応じて実際には組織として存在しない原価センタを定義することもあるということです。
時間基準で管理する項目
原価センタマスタにある項目はカスタマイズを行うことで、期間を区切って管理することが可能となっています。
わかりやすい例で言うと、今期はABC部と言う名称だったのが、来期からABD事業部に少し名称が変更されるという場合、新たな原価センタを採番するだけでなく、元々の原価センタのコードに対して、来期からの名称だけを変更して使い回すと言うことも可能です。
どのような期間の単位で管理するのかは、カスタマイズで日単位、会計期間単位、会計年度単位から指定することができます。多くの場合は、年度の変わり目や半期、四半期などの変わり目に組織変更が行われると思いますので、日単位での管理はあまり使わないとは思いますが、システム設定としては可能です。
また、どの項目を時間基準で管理するのかを定義できるのですが、多くの項目を定義してしまうと、その分データ量が増加することになるため、必要な項目をピックアップするのが良いと思います。
原価センタカテゴリで役割を区分する
原価センタでは、どの部課でどれだけのコストが計上されているのかを管理することができると、先ほど書きましたが、その対象は製造部門だけではなく、営業部門や管理部門など全ての部門が当てはまります。
ですが、原価管理上はどのコストをどの原価センタで計上するかや、減価償却費など製造部門で発生したのか管理部門で発生したのかで損益計算書上で表現する箇所が異なることもあるため、原価センタカテゴリという項目で区分できるようになっています。
どのような原価センタカテゴリを用意するのかは導入企業の要件次第なので、絶対この区分を定義するというのはありませんが、理解の上では、上記の通り製造部門・営業部門・管理部門に分けて定義するイメージで良いと思います。原価センタカテゴリのカスタマイズの際に機能領域を割り当てることができ、その原価センタカテゴリを割り当てた原価センタにコストを計上すると、原価センタカテゴリに紐付く機能領域がコスト明細に設定されます。
そうすると、製造部門に計上されたコストは製造原価(を経由して売上原価)、営業部門なら販売費、管理部門なら一般管理費の区分に損益計算書に表示できるようになります。(財務諸表バージョンでそのように定義する必要はあります)
また、活動タイプを定義する時に原価センタカテゴリを設定しておくと、直接活動配分で労務費を計上する場合等に誤ったカテゴリに計上することができないように制限することができます。例えば、製造部門で発生する労務費を管理部門の原価センタに計上することができないように、活動タイプに製造部門用の原価センタカテゴリを割り当てておくということができます。
原価センタグループで配賦やレポート用にグルーピング
原価センタも利益センタと同様に標準階層・代替階層というものがあります。
どちらも実態としては原価センタグループで、標準階層は管理領域に紐付く原価センタが全て含まれるように定義しておく原価センタグループで、代替階層はレポートや配賦等の用途に応じて定義する原価センタグループです。
原価センタの実績および計画データを参照するために用意された標準レポートがいくつかありますが、原価センタグループを指定してレポートを実行すると、原価センタグループの定義に合わせて集計した金額を照会することができます。
また、原価センタ配賦を行う時に周期という配賦ルールを定義するマスタがありますが、そこで配賦元・配賦先の原価センタを指定することになりますが、複数の配賦元から複数の配賦先に配賦する場合に個別に原価センタを指定するのではなく、原価センタグループを定義して、それを周期に設定するということができます。
原価センタには利益センタを紐付けて管理する
冒頭にも書きましたが、原価センタと利益センタはセットで扱うことになるマスタデータです。
原価センタは部課の費用を管理するために使用し、利益センタは部課の利益を管理するために使用します。(利益センタについてはそれだけではなく、貸借対照表科目についても管理するので、もう少し広い用途になります。)
利益は収益から費用を引いて算出することになるため、利益センタには費用の計上も行う必要があり、この費用は原価センタを利益センタに紐付けることで原価センタから利益センタに費用データが連携される仕組みになっています。具体的には、原価センタマスタを登録するときに利益センタを入力する欄があるため、そこに原価センタに対応する利益センタを入力しておきます。そうすると会計伝票の費用明細に原価センタを入力すると、自動で紐付く利益センタを誘導することになり、利益センタにも費用が計上されることになります。
原価センタはCOモジュール、利益センタはセグメント別の財務諸表を作成する観点でFI・COの両方の要件で利用することになりますが、CO担当として利益センタについて知っておくことは必須となりますので、以下の記事でも記載してます。
関連トランザクション
原価センタ関連のトランザクションコードは以下の通りです。
- 原価センタ登録:KS01
- 原価センタ変更:KS02
- 原価センタ照会:KS03
- 原価センタグループ登録:KSH1
- 原価センタグループ変更:KSH2
- 原価センタグループ照会:KSH3