SAP FIの入金・出金と消込の違い|F-28・F-53・F-32・F-44の使い分け

SAP FIで「入金したのに請求書が未消込のまま」「仕入先へ支払ったのに債務が残っている」と言われたときは、資金の動きの転記と未消込明細の消込を分けて考えると原因を追いやすくなります。この記事では、手動処理で使うF-28・F-53とF-32・F-44の違いを、得意先・仕入先それぞれの例で説明します。

対象:SAP GUIで操作するSAP ERPおよびSAP S/4HANAのオンプレミス/Private Editionを主に想定しています。画面、勘定設定、権限、Fioriアプリへの置き換えは導入環境で異なります。

最初に結論:入出金を転記するか、既存の明細を消し込むか

したいこと得意先(AR)仕入先(AP)
入金・出金を新たに転記し、対象請求書も消し込むF-28:入金転記F-53:出金転記
すでに転記済みの未消込明細どうしを対応付けるF-32:得意先消込F-44:仕入先消込

判断の要点:入金・出金の会計伝票をまだ作っていないなら転記を伴う処理を検討します。すでに得意先または仕入先の未消込明細として支払が記帳されているなら、二重に入金・出金を転記せず、消込を検討します。「銀行明細に載っている」だけでは、得意先・仕入先に支払明細が転記済みとは限りません。

入金・出金と消込は何が違う?

入金・出金の転記は、お金の受取・支払を会計に記録する処理です。消込は、請求書などの未消込明細と、それに対応する入金・支払明細を結び付け、対象を消込済みにする処理です。F-28やF-53では、支払の転記と請求書の消込を一度に行えます。F-32やF-44は、主にすでに存在する明細どうしの消込に使います。

得意先・仕入先の残高をG/L勘定とともに管理する仕組みは統制勘定の記事で説明しています。

得意先の例:F-28とF-32をどう使い分ける?

ケース1:請求100に対する入金100をこれから記帳する

得意先Aの請求書100が未消込で、銀行への入金100をこれからSAPに登録するなら、F-28で入金を転記し、対象の請求書を選択して消し込みます。保存後は、請求書明細と入金明細の消込状態をFBL5Nで確認します。入金転記時に消込まで完了していれば、F-32を重ねて実行する必要はありません。

ケース2:入金100はすでに得意先の未消込明細になっている

入金が得意先勘定の未消込明細として先に転記され、請求書100と対応付けるだけならF-32を使います。このときF-28で同じ入金を再登録すると二重計上につながります。FBL5Nで請求書と入金の両方が未消込として存在することを先に確認します。

仕入先の例:F-53とF-44をどう使い分ける?

ケース1:請求100に対する支払100をこれから記帳する

仕入先Bの請求書100が未消込で、支払をこれからSAPに登録するならF-53を使い、支払の転記と請求書の消込を行います。FBL1Nで対象の仕入先明細が消込済みになったかを確認します。複数の仕入先への定例支払を一括処理する場合は、手動のF-53ではなくF110による自動支払の運用もあります。

ケース2:支払明細はすでに仕入先に転記されている

支払明細と請求書明細が、同じ仕入先の未消込明細として存在するならF-44で消し込みます。F-53で支払を二度登録しないよう、FBL1Nで伝票番号・金額・転記日・消込状況を確認してください。

銀行明細に入出金があるのに消込できないとき

銀行の入出金データが取り込まれていても、その仕訳が銀行や仮勘定のG/L明細にしか記帳されていなければ、F-32・F-44で選べる得意先・仕入先明細はまだありません。まず銀行明細の後続処理や会計伝票の内容を確認し、対象の取引先に正しく転記する必要があります。資金の動きがSAPのどの勘定・どの取引先に記録されたかが、次の処理を決めます。

請求額と入出金額が一致しない場合

たとえば得意先請求書100に対して入金が60だけの場合、差額40をどう管理するかで処理結果が変わります。差額を勝手に消込済みにせず、請求条件や入金の意図、許容差・理由コードの設定を確認します。

処理方法請求書100入金60・残額40
部分入金元の請求書100は未消込のまま入金60も未消込明細として残り、両明細を後で対応付ける。
残額明細元の請求書と入金を消込差額40の新しい未消込明細を作り、その残額を追跡する。

どちらも取引先残高は同じでも、未消込明細の見え方と後続の督促・支払管理が変わります。仕入先への一部支払も同じ考え方で検討します。差額を費用・収益などに振り替える場合は、許容差や理由コードを含む自社の会計方針に従ってください。

処理前後の確認と誤消込の戻し方

  1. 処理前:FBL5N(得意先)またはFBL1N(仕入先)で、請求と入出金の伝票番号、金額、通貨、未消込状態を確認します。
  2. 処理時:会社コード、取引先、対象明細、差額、転記日・会計期間を確認します。別取引先や別請求書への消込に注意します。
  3. 処理後:対象明細の消込状況、消込伝票番号、残額明細の有無を確認します。必要に応じてFB03で伝票を照会します。

誤った明細を消し込んだ場合は、FBRAで消込のリセットを検討します。消込だけを戻すのか、消込伝票の反対仕訳も必要かは元の転記内容によって異なります。単にFB08で入金・出金伝票を反対仕訳する前に、消込状態を確認してください。

よくある質問

F-28やF-53を実行したら、必ず消込まで終わりますか?

いいえ。対象の未消込請求書を選んで消込まで実行したか、入出金だけを取引先勘定に未消込で転記したかで結果が変わります。保存後の状態をFBL5N・FBL1Nで確認してください。

F-32やF-44だけで銀行の入出金を記帳できますか?

F-32・F-44は既存の未消込明細の対応付けに使う画面です。銀行側や取引先側への必要な転記がまだない場合は、先にその転記が必要です。

F110とF-53の違いは?

F-53は個別の手動出金、F110は支払対象の提案・確認・支払実行を行う自動支払です。どちらを使うかは支払件数や支払方法、自社の承認・銀行連携の運用で決めます。

まとめ

「新たな入出金の転記が必要か」「請求書と支払の未消込明細がすでに存在するか」を先に確認すれば、F-28・F-53とF-32・F-44を選びやすくなります。最後にFBL5N・FBL1Nで消込結果まで確認することが、二重計上や未消込の取り残しを防ぐ基本です。

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